iPhone 4からiPhone 5sまで

2010年に発表されたiPhone 4は、iPhoneの歴史において最も大きなデザイン転換のひとつとなったモデルです。それまでの丸みを帯びたプラスチック筐体から一転し、ステンレススチールのフレームと前後両面のガラスパネルを組み合わせたフラットなデザインが採用されました。工業製品としての精緻な美しさは多くのユーザーを魅了し、「持つ喜び」を感じさせるプロダクトとしてのiPhoneの地位を確固たるものにしました。
技術面でも、iPhone 4は大きな飛躍を遂げています。Retinaディスプレイと名付けられた高精細スクリーンは、960×640ピクセルという当時としては驚異的な解像度を誇り、肉眼ではピクセルの粒を識別できないほどの表示品質を実現しました。また、前面カメラの搭載によりFaceTimeビデオ通話が可能になり、人と人とのコミュニケーションの形にも変化をもたらしています。一方で、本体側面のアンテナ部分を手で覆うと電波感度が低下するいわゆる「アンテナゲート」問題が発生し、ジョブズが「そのように持たなければよい」と発言して物議を醸す場面もありました。
2011年のiPhone 4Sでは、音声アシスタント「Siri」が初めて搭載されました。自然言語で端末に話しかけて操作するという体験は、AIアシスタントという概念を一般に広めるきっかけとなっています。また、iPhone 4Sは2011年10月に亡くなったスティーブ・ジョブズの生前最後に関与したiPhoneとしても知られています。カメラ性能も800万画素に向上し、日常的な写真撮影においてコンパクトデジタルカメラの代替として十分な品質を備えるようになりました。
2012年のiPhone 5では、画面サイズが3.5インチから4インチへと拡大されました。iPhoneが初代から守り続けてきた3.5インチという画面サイズからの変更は、大画面化を求めるユーザーの声に応えた判断でした。同時に、充電・通信用コネクタが30ピンDockコネクタからLightningコネクタへと刷新され、小型化と利便性の向上が図られています。素材にはアルミニウムが採用され、薄く軽い筐体が実現されました。
そして2013年、iPhone 5sは指紋認証センサー「Touch ID」を搭載し、セキュリティと利便性を両立する新しい認証方式を提示しました。ホームボタンに指を載せるだけでロックが解除される体験は、パスコード入力の煩わしさを解消し、後のモバイル決済普及への道を開いています。同時に発売されたiPhone 5cは、カラフルなポリカーボネート筐体を採用した廉価モデルとして、iPhoneの市場拡大に貢献しました。この時期のiPhoneは、毎年着実に機能を積み重ね、スマートフォンの完成度を高めていった時代といえます。