成熟と多角化の時代

2018〜2021年

iPhone XS/XRからiPhone 13まで

iPhone Xで打ち出されたオールスクリーンデザインとFace IDは、2018年以降のiPhoneにおける標準仕様として定着しました。iPhone XSとXS Maxでは画面サイズの選択肢が広がり、6.5インチのXS Maxは当時のiPhone史上最大のディスプレイを搭載しています。同時に登場したiPhone XRは、液晶ディスプレイやシングルカメラを採用しつつも、iPhone Xの設計思想を踏襲したモデルとして、より手頃な価格帯で提供されました。このXRの成功は、Appleに「フラッグシップに準ずるモデルを幅広い層に届ける」という戦略の有効性を確信させたといえるでしょう。

2019年のiPhone 11シリーズでは、カメラ機能の進化が最大の焦点となりました。iPhone 11 Proには超広角・広角・望遠のトリプルカメラが搭載され、さまざまな画角での撮影が1台で完結するようになっています。暗所撮影を劇的に改善する「ナイトモード」は、専用のカメラ機材なしに夜景を美しく撮影することを可能にし、スマートフォンカメラの実力を一段階引き上げました。動画撮影においても4K60fpsの撮影やフロントカメラでのスローモーション(スローフィー)に対応するなど、プロフェッショナルな用途にも耐えうる水準へと進化しています。

2020年は、iPhoneにとって大きな転換点となった年です。iPhone 12シリーズは5G通信に対応し、次世代のモバイル通信時代への一歩を踏み出しました。デザイン面ではiPhone 4を彷彿とさせるフラットエッジデザインが復活し、直線的で洗練された印象を与えています。さらに、iPhone 12 miniという5.4インチの小型モデルが登場し、コンパクトなスマートフォンを求めるユーザーの選択肢が広がりました。一方、充電器やイヤホンの同梱が廃止され、環境負荷低減への取り組みが本格化したのもこの世代からです。MagSafeシステムの導入により、磁力を利用したワイヤレス充電やアクセサリの着脱が可能になり、iPhoneを中心とした新しいアクセサリエコシステムが生まれています。

2021年のiPhone 13シリーズでは、各モデルの着実なブラッシュアップが図られました。全モデルでセンサーシフト式光学手ブレ補正が採用され、動画撮影の安定性が向上しています。映画のようなフォーカス送りを自動で行う「シネマティックモード」は、プロの映像技法をポケットの中のデバイスで再現できることを示しました。また、ProモデルではProMotionテクノロジーにより最大120Hzのリフレッシュレートが実現し、画面スクロールやアニメーションの滑らかさが大幅に向上しています。この時期のiPhoneは、一つひとつの機能が高い水準にまで磨き上げられ、スマートフォンという製品カテゴリの成熟を象徴する存在となっていきました。